ShopifyのROAS、何%なら黒字?粗利から決める損益分岐ROASと広告判断の4ステップ
「ROASは300%出ているのに、月末に通帳を見るとお金が残っていない」。Shopifyで広告を回していると、こうしたズレはよく起きます。原因の多くは、黒字になるROASのラインを、商品原価だけで引いていることです。
本記事の主キーワードは損益分岐ROASです。計算式そのものはシンプルですが、Shopifyストアで実際に使うには「どのコストを入れるか」「どの売上で割るか」「何%なら止めて何%なら増やすか」を先に決めておく必要があります。その手順を4つに分けて整理します。文中の金額は説明用の仮の数字で、実在のストアの実績ではありません。
この記事でできること
- 損益分岐ROASと目標ROASの違いを押さえ、自社の数字で計算する
- Shopify特有の変動費(決済手数料・送料・クーポンなど)を漏れなく入れる
- 広告管理画面のROASとShopifyの売上がずれる理由を知り、判断に使う数字を決める
- 計算結果から「止める・直す・維持・増やす」を決める
前提:ROASと損益分岐ROAS
ROASは広告費1円あたりの売上で、ROAS(%)=広告経由の売上÷広告費×100です。ROAS 100%は「売上=広告費」なので、黒字どころか原価分まるごと赤字です。
広告費がちょうど粗利と同じになり、利益がゼロになるROASが損益分岐ROAS(限界ROASとも呼ばれます)です。
- 損益分岐ROAS(%)=1÷粗利率×100
- 粗利率=(売上−変動費)÷売上
実ROASがこのラインを下回る広告は、売れるほど赤字が積み上がります。ここまでは多くの解説と同じです。差が出るのは次の「変動費に何を入れるか」です。
ステップ1:変動費を「1注文あたり」で全部並べる
粗利率を商品原価だけで計算すると、損益分岐ROASが低く出て、赤字の広告を「黒字」と判定してしまいます。Shopifyストアでは、少なくとも次を1注文あたりで並べます。
- 商品原価(仕入れ値・製造原価)
- 送料の自社負担分(送料無料ラインを設けているなら、その分は丸ごと自社負担)
- 梱包資材・同梱物
- 決済手数料:Shopify公式の料金ページ(2026年10月時点の掲載)では、Shopifyペイメントの国内オンラインカード料率はプランにより2.9%〜3.55%、海外発行カードやAmexはそれより高く設定されています。Shopifyペイメント以外の外部決済を使う場合は、プランに応じて0.2%〜2%の外部サービス取引手数料が別にかかります。料率は変わることがあるため、計算前に自社のプランで確認してください。
- クーポン・ポイント・初回割引(広告経由の新規客ほど使われやすい)
- 返品・交換・不良のコスト(発生率×1件あたりのコストで按分)
- 売上連動のアプリ費用や手数料(売上に比例して増えるものだけ)
月額固定のアプリ代や人件費は、ここでは入れません。損益分岐ROASは「この広告を1件回すと得か損か」を見る数字なので、広告の有無で増減しない固定費は別枠で管理します。
仮の数字で計算してみる
販売価格5,000円の商品で、1注文あたりの変動費が次のとおりだとします(すべて説明用の仮の数字です)。
| 項目 | 1注文あたり |
|---|---|
| 商品原価 | 1,800円 |
| 送料(自社負担) | 600円 |
| 梱包資材 | 100円 |
| 決済手数料(3.55%で計算) | 約178円 |
| クーポン・ポイント(5%) | 250円 |
| 変動費合計 | 約2,928円 |
広告前の粗利は5,000円−2,928円=約2,072円、粗利率は約41%です。損益分岐ROASは5,000÷2,072×100で約241%になります。
同じ商品を原価だけで計算すると、粗利率は64%、損益分岐ROASは約156%です。この見方だと「ROAS 200%なら黒字」に見えますが、変動費を全部入れると、ROAS 200%は1注文あたり広告費2,500円に対して粗利2,072円しかなく、1件売れるごとに約428円の赤字です。月末にお金が残らない正体は、たいていこの差です。
ステップ2:損益分岐ROASとは別に「目標ROAS」を決める
損益分岐ROASは利益ゼロのラインなので、ここを目標にすると広告で稼いだ分がすべて広告費に消えます。残したい利益率を先に決め、目標ROAS(%)=1÷(粗利率−残したい利益率)×100で計算します。
上の仮の例で、広告費を引いたあとに売上の10%を残したいなら、1÷(0.414−0.10)×100で約318%が目標です。つまりこの商品は、241%を下回れば赤字、241〜318%は「売上は増えるが利益目標には届かない」、318%以上で初めて狙いどおり、という3段階で見ます。
目標ROASを上げすぎると配信量が絞られ、売上そのものが小さくなることがあります。高いROASで少しだけ売るか、目標ギリギリで大きく売るかは、利益の「率」ではなく「額」で比べて決めます。
ステップ3:判断に使う「売上」と「広告費」をそろえる
Meta広告やGoogle広告の管理画面に出るROASは、それぞれの媒体が自分の計測ルール(クリック後・表示後の何日以内を広告経由と数えるか等)で売上を数えた結果です。Shopify側のマーケティングレポートとは数え方が違うため、数字が一致しないのはむしろ普通です。複数の媒体が同じ注文をそれぞれ「自分の成果」として数えることもあります。
そこで、判断用の数字を次のように決めておきます。
- 媒体内の比較(キャンペーンAとBのどちらが良いか)は、管理画面のROASを使ってよい
- 黒字か赤字かの判定は、Shopify側の実売上(キャンセル・返品後)と、全媒体の広告費合計で見る
- 期間は最低でも週単位で区切り、セールやクーポン配布の週は別に記録する
媒体の数字だけで「損益分岐を超えている」と判断すると、合算したら赤字だった、ということが起きます。黒字判定は、最終的にお金が入ってくる側の数字で行うのが安全です。
ステップ4:「平均」ではなく商品ごとにラインを引く
ストア全体の平均粗利率で損益分岐ROASを1本だけ引くと、粗利の薄い商品に広告費が寄ったときに見落とします。広告の自動最適化は売れやすい商品に配信を寄せやすく、売れやすい商品が粗利の薄い商品であることも少なくないからです。
商品(SKU)ごと、少なくとも広告で売っている主力商品ごとに損益分岐ROASを出し、実ROASと並べて次のように仕分けます。
| 実ROASの位置 | 判断 |
|---|---|
| 損益分岐ROAS未満 | 止める、または配信対象・入札・商品ページを直してから再開 |
| 損益分岐〜目標の間 | 維持しつつ改善(客単価アップのセット販売、送料無料ラインの見直し、クーポン条件の調整) |
| 目標ROAS以上 | 予算を少しずつ増やし、ROASがどこまで落ちるかを確認 |
新規客の獲得を優先して、初回購入は損益分岐を下回ってもよいと判断する場合もあります。その場合は「何回目の購入で広告費を回収するか」を先に決め、リピート率の実績で確かめられる状態にしてから赤字を許容します。回収の見込みを決めないまま「新規だから赤字でいい」とすると、広告費が増えるほど資金が減ります。
商品ごとの広告後粗利を毎週出すのが面倒なら
上の4ステップは、スプレッドシートでもできます。ただ、Shopifyに加えてAmazonや楽天市場でも売っていると、売上・原価・広告費をモールごとに集めて商品単位でそろえる作業が毎週発生し、続かなくなりがちです。
株式会社MoreChoiceが提供するEC Choice AIは、Shopify・Amazon・楽天市場などの売上と広告費をまとめ、商品ごとの広告後粗利を出すツールです。「売上1位の商品が、広告費を引くと赤字だった」に気づくための見える化から始められます。EC Choice AIの新規登録はこちらです。
まとめ
- 損益分岐ROASは「1÷粗利率」。粗利率には原価だけでなく、送料・梱包・決済手数料・クーポン・返品まで入れる
- 利益ゼロのラインとは別に、残したい利益率から目標ROASを決める
- 媒体の管理画面のROASは媒体内の比較に使い、黒字判定はShopify側の実売上と全媒体の広告費合計で行う
- 平均ではなく商品ごとにラインを引き、「止める・直す・維持・増やす」を決める
Shopifyストアの構築・改善に加えて、広告の数字を粗利で見直したい場合は、株式会社MoreChoiceへのお問い合わせからご相談ください。サイト側の改善の考え方はECサイトリニューアル、「改善」で足りるか「作り直し」かの判断チェックリスト、テーマ改修の注意点はShopifyテーマカスタマイズ、コードを触る前に決める4つのチェックポイントでも整理しています。